COVID-19のパンデミックの中、外傷性脊髄損傷患者に早期に横隔膜ペーシング(以下、DP)を植込み、人工呼吸器からの離脱及び気管切開の使用への影響を報告しています。
2020年1月1日~2022年12月31日までにDPが植込まれた患者197名の内、損傷後30日以内にDPを植込んだ患者13名を対象としています。すべての患者は男性で、平均年齢は49.3歳(範囲:17~70歳)、損傷後DP植込みまでの平均日数は11日(3~22日)でした。
人工呼吸器からの離脱について:13名の患者の内9名が人工呼吸器から完全に離脱しました(69%)。損傷から90日未満の早期死亡で人工呼吸器から離脱しなかった2名の患者を除くと、11名の患者の内9名が人工呼吸器から離脱しました。9名の患者すべてが24時間人工呼吸器から離脱しています。
気管切開の使用について:13名の患者の内4名は気管切開を行わず、DPのみで人工呼吸器からの離脱に成功し、平均入院日数は19日(16~27日)でした。一方で、気管切開を行った8名において、損傷から気管切開を行うまでの平均日数は15.6日(3~27日)、平均入院日数は27日(16~42日)でした。
11名の患者の長期予後について:損傷から平均15.5カ月(8~21カ月)での長期予後は、人工呼吸器から離脱できなかった2名の患者はDPを使用していません。COVID-19に罹患した3名の患者は、気管カニューレを抜管することができ、DPを使用することでCOVID-19から回復しています。5名の患者はDPから離脱し、自発呼吸が完全に回復しました。
この報告では、COVID-19のパンデミックの中、DPを早期使用することで、気管切開の実施率を低減させ、人工呼吸器からの離脱を改善し、より効率的な退院を可能にしたと結論付けています。将来の災害時やパンデミック時において人工呼吸器の必要性に直面した場合、脊髄損傷患者への早期DP植込みの実施は有効です。
引用文献:Onders RP et al. Surgery. 2022 Sep 7;S0039-6060(22)00693-6. Observational study of early diaphragm pacing in cervical spinal cord injured patients to decrease mechanical ventilation during the COVID-19 pandemic.
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